岩崎建築研究室・日誌II

京都・下鴨の設計事務所。茶室のリフォームや新築をメインに、和風住宅や和菓子舗、日本料理店、和風旅館、古民家改修などの設計監理を行なっています。

総本家更科

総本家更科さんの内装、腰壁は全て本木賊。お店の人のお話だと、建築当時、職人さんが一日2~3枚だけ貼って帰った時もあったとか。決して職人さんの腕が悪いわけでもなく、怠けていたわけでもなく、本木賊はそれほど手間のかかる仕事。お店は間口5.7m、奥行き9.8mなので、四面の延べ長さは31m。一日に施工できるのが20cmだとすると155人工!3人でやっても50日、約二ヶ月間、ずっと腰壁の施工という手間のかけようはスゴい。腰壁を本木賊にすることを決めたのが、建築主か大工かわかりませんが、どちらにしても建築に対する思いが素晴らしい。本木賊だけでなく、隅丸のガラス戸も曲面の竹網代ケヤキの作業台も、隅々まで手のかけられた素晴らしい建物。現在も木部は綺麗に洗われ丁寧に手入れされていて、でも声高に自慢をするわけでもなく、美味しいお蕎麦を、こんな環境で食べられるのは、本当に豊かな文化だと思う。願わくは末長くお店を続けていただき、建築関係者としてはこうした建物が維持できるようお手伝いしていければと思う。