岩崎建築研究室・日誌II

京都・下鴨の設計事務所。茶室のリフォームや新築をメインに、和風住宅や和菓子舗、日本料理店、和風旅館、古民家改修などの設計監理を行なっています。

本木賊の補修工事

通天閣の足元、お蕎麦総本家更科さんの補修工事。店内の腰壁は全て竹の本木賊!出隅部分が壊れ、本木賊を補修のお願いできるところをネットで探されて、ご連絡をいただいた。竹で補修をしても又ぶつかって壊れそうなので、あて丸太での改修をご提案。材料を用意し、定休日に工事。本木賊同様、削って、あてがって、又削っての繰り返し。さすが桂離宮等持院などの修復をされてきた大工さんたち、見事納めていただき無事終了。素晴らしい建物、永く使っていただければと思います。

椅子とめぐる20世紀のデザイン展

なんば高島屋の「椅子とめぐる20世紀のデザイン展」へ。マッキントッシュのチェア(ヒルハウス)ラダーバックの最上部は日本の伝統建築の影響?ワーグナーのウィーン郵便貯金局のチェア。役職によって違うデザイン。背板の丸い刳り貫き。リートフェルトの赤と青の椅子。13本の角棒と4枚の薄板。リートフェルとは指物師の息子とのこと。日本の木工や指物の感覚なら角材同士は相欠きにするかな。ミースのバルセロナチェア。X型に交差する脚は、フラットバーを上下から接合させ溶接したあとに研磨している。ミースの職人的かつ建築的な洗練されたデザインはすごい。ポンティのスーパーレッジェーラ。極限まで削ぎ落とされた三角形のフレーム。数寄屋に応用してみたくなる、極限まで洗練されたデザイン。新居猛のニーチェアは畳の間にも似合い素晴らしいデザイン。

 

総本家更科

総本家更科さんの内装、腰壁は全て本木賊。お店の人のお話だと、建築当時、職人さんが一日2~3枚だけ貼って帰った時もあったとか。決して職人さんの腕が悪いわけでもなく、怠けていたわけでもなく、本木賊はそれほど手間のかかる仕事。お店は間口5.7m、奥行き9.8mなので、四面の延べ長さは31m。一日に施工できるのが20cmだとすると155人工!3人でやっても50日、約二ヶ月間、ずっと腰壁の施工という手間のかけようはスゴい。腰壁を本木賊にすることを決めたのが、建築主か大工かわかりませんが、どちらにしても建築に対する思いが素晴らしい。本木賊だけでなく、隅丸のガラス戸も曲面の竹網代ケヤキの作業台も、隅々まで手のかけられた素晴らしい建物。現在も木部は綺麗に洗われ丁寧に手入れされていて、でも声高に自慢をするわけでもなく、美味しいお蕎麦を、こんな環境で食べられるのは、本当に豊かな文化だと思う。願わくは末長くお店を続けていただき、建築関係者としてはこうした建物が維持できるようお手伝いしていければと思う。

木目込み雛人形

旧暦三月三日、上巳の節句。ウチには娘がいないので、妻が子供の頃のものを譲り受けて飾っている。せっかく飾るので、3/3から旧暦三月三日まで飾ることにしている。

 

ころんとしたフォルムがかわいい木目込み雛人形。「木目込み」とは木片や粘土のようなもので人形の型を作り、 着物の折れ目やしわの部分に切れ込みをいれた製法。今から約270年前の江戸中期、京都の上賀茂神社に仕えていた神官が奉納する柳筥(やないばこ:神事に用いられる箱)を作るかたわら、柳の木で人形を作ったのが木目込み雛人形の始まりとのこと。一般的な衣装着人形に比べて、素朴で扱いやすく、横長のプロポーションはより京都らしいのではと感じている。

八角柱の門

朝の散歩で見かけた門。以前住んでいた家の近くなので、存在は認識していたものの、改めて見ると美しい門だったので写真撮影。

 

門柱が八角形。格子戸は気を衒わないシンプルな意匠。

 

束石も八角に加工。

 

鴨居も八角形、建具との納まりもエッヂが効いている。桁も八角形。

 

垂木は扇垂木。ありそうでない、美しい門だと思う。

 

隣の家の門。こちらも建具に美しい板を使ったり、欄間に大きな節の板を使ったり良い門ではありますが。比較すると八角形の柱梁の門の特徴が良くわかると思う。

 

持ち主が変われば壊されてしまうだろう。残す価値のあるものだとは思うが、いつかは無くなるもの。せめて設計者としては、こうした素晴らしい意匠があったことを記憶に留め、こうしたものを希望する建築主が現われた時には、美しい門を設計できるようになっておきたい。

花蘇芳

ハナズオウ(花蘇芳)。中国原産のマメ科の落葉小高木。花の色が蘇芳で染めた色に似ていることから、ですが、花蘇芳と蘇芳はそれほど近い種でもないらしい。蘇芳はインドマレー諸島原産。飛鳥時代から染料として輸入されて、公家の衣服に使用された。蘇芳色は日本画の絵具としても使われ、今昔物語では凝固しかけた血液の表現にも使われているらしい。