岩崎建築研究室・日誌II

京都・下鴨の設計事務所。茶室のリフォームや新築をメインに、和風住宅や和菓子舗、日本料理店、和風旅館、古民家改修などの設計監理を行なっています。

仕付棚

現在計画を進めている京都別邸茶室計画の建築主さんより、台目構えの仕付棚(二重棚)の上の棚には何も載せないの?とご質問があったので、手元の資料を調べてまとめておこうと思う。

淡交テキスト「台目初炭手前」より。「仕付棚がある場合、棚の左前角に香合、その右のほうへ羽箒をななめに、八の字形になるようにおきます。」

淡交テキスト「台目初炭手前」より。「仕付棚のほう、畳中央に向いて羽箒を右手で取り、膝前一文字に置きます。」袖壁の引き竹の高さは二尺二寸、下の棚は一尺八寸。このバランスは変えられないもののように感じます。

同じく淡交テキスト「台目初炭手前」より。「香合が戻ると、膝前に棗を置いて、襖を開け、棗を右手で取って、左掌にのせ、右手を添えて持ち、正面、畳中央に坐って、右一手で棗を棚中央に荘ります。」

裏千家道教科8特殊点前炉「台目切濃茶」「茶入の仕覆をぬがせ、仕付棚の場合は、打ち返して棚にのせます。台目の中柱に袋釘がある場合は釘にかけます。ただしこの場合は仕覆は打ちかえさずにかけます。」

淡交テキスト「台目濃茶点前」より。「茶入を畳の中央に荘りつけ、仕付棚には薄茶器を荘っておきます。」

と言うことで、これらのテキストを見る限り、二重棚の上の棚には何も載せないようです(ただし裏千家の場合。武家流の雲雀棚は羽の載せるよう大きくなっている)。ならば、下の棚だけでも良いようなものですが、それでは間が抜けるし、構造的にも不安定。上の棚は下の棚に飾るものの天井のような意味があるのかもしれません。

またコロナ禍を経た現在、幾つか替え茶碗を用意しなければならない場面も多く、そうした時には、この上の棚に替えの茶碗を置いて使われている方もいらしゃるかもしれません。


袋釘については茶室露地大事典よれば「茶入の仕覆を掛けるための釘の事。「袋掛釘」ともいう。普通、台目構えの中柱、点前座側に打たれ、鉄製のものと竹製のものがある。流儀によっては、小さな折れ釘が用いられることもある。」とのこと。

釣り竹については、蓑庵では正面から、裏千家のテキストにある茶室では側面から、打たれています。前から物を出し入れすることを考えると、わずかなことだが、側面にした方が親切なような気もします。

 

正面向かって右につく釣り木については、中村昌生先生の著書のイラストによれば、材種は樫となっています。そこまで堅い木を使わなくても、とも思いますが、少し遊んで杉や桐でない材種を使っても良い箇所なのかもしれません。