岩崎建築研究室・日誌II

京都・下鴨の設計事務所。茶室のリフォームや新築をメインに、和風住宅や和菓子舗、日本料理店、和風旅館、古民家改修などの設計監理を行なっています。

温山荘(欄間編)

温山荘(欄間編)
主屋にはめられた欄間が素晴らしいので、特に取りあげてブログをまとめてみる。

作者は相原雲楽(1878-1954)。彫刻家・高村光雲に弟子入りした後、住友家に認められ、住友本家及び須磨別邸、住友銀行、旧大阪図書館(現中之島図書館/住友家が寄付)、旧松本健次郎邸、大阪倶楽部松山市萬翠荘(温山荘と同じ木子七郎設計)などに多くの彫刻作品を残している。

波にうさぎの組み合わせは古くから日本の工芸の意匠に見られ、江戸時代初期に流行。能、竹生島にちなむもので「波に兎(時々+月)」という図案自体を「竹生島」とも呼ぶ。


あらすじ

醍醐天皇の御代に仕える臣下が、竹生島へ参詣の途中、琵琶湖の畔まで来ると、「漁翁」と若い「女」とが乗った釣船が来た。それに乗せてもらい、竹生島に着いて、「漁翁」の案内でお参りすると、「女」も社に近づいてきた。この島は女人禁制ではないかと問うと、「漁翁」は、この社の弁財天は女の神であるから、女の人だからと隔てることはないと言う。その時「女」は、『我は人に非ず』と言って社殿に入り、「漁翁」も、『我はこの湖の主ぞ』と言い捨てて波の中に入る。ややあって社殿が鳴動すると、弁財天が現れ、夜遊の舞楽を奏で、続いて湖上には龍神が出現し、臣下に金銀珠玉を献じた後、天女は社殿に、龍神は波を蹴立てて籠宮に帰る。


竹生島に向かう途中の一節
「浦を隔てて行くほどに、竹生島も見えたりや。緑樹影沈んで、魚 木に上る景色あり、月 海上に浮かんでは、 兎も波を走るか、面白の浦の景色や。」

「湖岸を離れて進みゆくうちに、竹生島も見えてきたではないか。木々の緑の影が湖面に映り、湖底に沈んで、水中に泳ぐ魚はあたかもその木々に登るかのよう。月が湖上に影を映すと、月の中の兎も波の上を走るのかと思われる。なんとまあ面白いこの島の景色であること。」

水面に月が映るので、月の兎が波の上を走るようだ、ということのようです。

二十四畳の主座敷の東側、続き間の六畳二室との間。二間+二間、計四間、約7.6mにわたって続く波。襖は引手が見えるように、少し開けた状態にされている。管理人さんが建物を愛し、細やかに気を配ってくださっている様子が伺える。

 

二十四畳の主座敷と六畳(南)との間。

二十四畳の主座敷と六畳(北)との間。欄間上の束は微調整できると思うので、私なら竿縁と束が芯揃えにするかな。

六畳(南)と六畳(北)との間。

六畳(南)から見る。

躍動感のある彫刻。

折矩(おりかね)に続く波。

束を跨いで、続く波。

兎詳細。材種は何だろう。もちろん杢目の出具合も計算して木取りがされていることと思う。

波詳細1。

波詳細2。

兎の後ろ姿。

影になる兎。

いつか座敷を設計するときに、彫刻家に欄間を依頼するなどしてみたい!