岩崎建築研究室・日誌II

京都・下鴨の設計事務所。茶室のリフォームや新築をメインに、和風住宅や和菓子舗、日本料理店、和風旅館、古民家改修などの設計監理を行なっています。

八重桜

いにしへの奈良の都の八重桜 けふ九重ににほひぬるかな 伊勢大輔

 

古(いにしえ)と今日、奈良と京、八重と九重と、時間と空間の対比が見事に織り込まれた素晴らしい歌。奈良の僧侶から一条天皇のもとに八重桜が送られ、それを受け取り和歌を詠む役を紫式部から譲られた伊勢大輔。この歌を即座に詠み、道長は感嘆し、周囲からもどよめきが起こったとか。

 

猪俣邸

東京での打ち合わせ前に少し時間があったので、吉田五十八の猪俣邸を駆け足で見学。

 

書斎のすぐ裏に小間の茶室があるという茶人憧れの間取り。

 

水屋の竹釘、トキン型は藪内流と聞くが、茶室は裏千家今日庵写し。

 

和室十畳の床脇地板は漆布張り。

 

床框のルーバーは空調の吸い込み。

 

四畳半茶室の水屋、脇に銅板の立水屋。

 

千切りが施された蹲踞。

山吹と井手

色も香も なつかしきかな 蛙鳴く

井手のわたりの 山吹の花 小野小町

 

山吹の 花咲く里に 成ぬれば

ここにもゐでと おもほゆるかな 西行

 

山吹の 花の盛りに なりぬれば
井手の渡りに ゆかぬ日ぞなき 源実朝

 

 

奈良時代に「井手左大臣」と呼ばれた橘諸兄(たちばなのもろえ)は、山吹を好んで自身の邸宅や玉川(京都府綴喜郡井手町)沿いに植え、その見事さは数々の和歌にも詠まれてきた。玉川はカジカガエルの鳴き声も有名で、山吹と蛙は、井手の玉川を象徴する歌枕となった。

民家数寄屋の邸宅

現代の数寄者と建築家小町和義と安井杢工務店が三位一体となって作り上げた「民家数寄屋」の邸宅。かねてより書籍などで眼にしていて、この家はスゴイと思っていたが、なんと中高の同級生の実家!と判明、お願いをして見学をさせてもらった。大正期に京都から茶匠を招いて作ったという茶室と露地もあり、庭も美しく維持されていて、こんな個人住宅があるのかと、ただただ驚愕。貴重な図面も拝見させていただき、こんな仕事をしなければ!と活力をもらった。M君ありがとう!

花生釘

阪神間八畳茶室。茶会は無事終わりましたが、残っていた花生釘を床柱に打って画竜点睛。茶会のときには咲いていなかった桜も咲き、美しいモミジの新緑も見ることができた。工期の限られた工事でヒヤヒヤでしたが、無事完成できてよかった。ご依頼くださった建主様、施工してくれた職人さんたち、ご紹介くださったO様、皆様ありがとうございました。

茶室模型と打ち合わせ

茶室の模型を持参して打ち合わせ。模型を作りながら、ここはこうした方が良いかも、と思っていたところを、写真を見た建築主さんからもご指摘いただき、納得して修正。眼の肥えた建築主さんからのご要望は、どれも首肯できるものばかりで、打ち合わせも楽しく、より良い方へ進められたように思う。